和漢薬コラム

芍薬(シャクヤク)☆

季節は秋のはずですが、真夏のような湿気と日差しが目にまぶしい9月の京都です。昼間の暑さと朝夕の涼しさのギャップが本格的になるにつれ、お客様の「夏バテ」症状が気になる昨今です。

今回の学びは“芍薬”(シャクヤク)です。ボタン科の植物で、日本には奈良時代に中国から生薬原料として渡来し、室町時代には生け花や切り花にも珍重されるようになりました。漢方の原典「神農本経」には<腹痛~除血痺~利小便>と気・血・水の症状全てに有効であるとされていてその薬能の優秀さは数ある和漢生薬のなかでも群を抜いています。ありとあらゆる処方(もちろん葛根湯にも)に配合され、主に水の停滞(水滞症)が原因の症状に著効があります。生薬原料を口にしてみると、その産地や修治(加工)によって差がかなりありますが、苦味と併せてほんのりとした甘味が感じられました。国産のものから中国産のものまで7~8種類を味見できました。おしまいの頃には口の中がごっちゃになってしまいました(笑)。
「苦味」は普通は血の症状に向くとされていますが、我が大師匠“渡邉武先生”が芍薬を「大小腸の水滞を小水で排泄する苦平の水剤」と定義されたことで舌に感じた味覚と薬効が見事に一致します。
先人や中国の人たちは、この芍薬を症状に応じて使い分けたのだそうです。重要な生薬だけに効果へのこだわりと、眼の前の病人を治したいという思いを感じさせるエピソードも聞くことができました。

秋が深まり夏バテが本格的になると、単なる胃腸症状がより深刻化するようになり胃腸風邪になるお客様も散見されます。自分自身の体調管理は言うに及ばずですが、お客様の健康を支える立場として食養と方技を磨き続けることの重要性と気持ちを新たにした研修でした。
渡邉繁久